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【米国経済】高まるアメリカの長期停滞論って?

ECONOMY
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長期停滞という表現は、1930年代にハーバード大学のアルヴィン・ハンセン教授が唱えたのをきっかけに広く用いられるようになった。2013年にハーバード大学のローレンス・サマーズ教授が欧米の現状を論じるために持ち出したことで、ここ数年、再度脚光を浴びている。

長期停滞についての明確な定義は存在しないが、通常は低成長、低インフレ、低金利の組み合わせが長期にわたって継続する状態をいう。


長期停滞をめぐる議論

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長期停滞論に関する議論が盛り上がるきっかけをつくったサマーズ教授は、期待収益率の低下による投資需要の減少や、所得分配の不平等化を背景とした消費の減退による需要不足が長期停滞の原因であると結論付けている。さらに過剰貯蓄・投資不足の結果、供給力が低下し、潜在成長率自体を引き下げているという。

一方で、長期停滞の理由として、供給側に視点を置いた議論も存在する。ノースウェスタン大学のロバート・ゴードン教授は、

米国経済は産業革命後の250年間において目覚ましい発展を遂げたが、それは歴史上において例外的な期間で達成されたものにすぎず、同様の技術革新は難しいために、成長率は鈍化局面に入った。

としている。

現象としてのGDP成長率の鈍化傾向は現実に確認できるが、その原因に関しては経済学会でも見分が分かれており、統一的な見解は得られていない。そのため、成長率の低下に対する処方箋も明確になっていないというのが実情。

ただし、近年は金融政策との関連から中立金利、すなわち潜在成長率の低下に関する問題意識が高まっており、供給面、とりわけ労働生産性の伸びの鈍化が議論の中心になっている。

 


労働生産性の低下は設備投資不足が原因

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では、なぜ労働生産性の伸びは鈍化しているのだろうか?

労働生産性上昇率は、

①労働の質

②資本装備率

③全要素生産性(TFP)

の3要因に分解できる。

労働の質とは、労働者における技術の蓄積などであり、高学歴化や職業訓練などによって向上すると考えられている。

資本装備率とは、労働投入量当たりの資本ストック量であり、資本蓄積が進むほど労働生産性は向上する。

TFPとは、経済成長の源泉のうち労働と資本意外の部分であり、一般的には技術革新などで上昇。

まず、労働の質の推移をみると、労働生産性に対する寄与度は90年代平均からみると縮小している。教育水準の継続的な上昇傾向が続く一方で、金融危機以降の失業期間の長期化などが影響し、ここ数年でやや押し上げが減速していると考えられる。しかし、寄与度の縮小幅は小さく、足元でも労働生産性を一定程度押し上げていると評価できる。

TFPによる寄与も同様の傾向が確認できる。労働生産性に対する寄与度は小幅に縮小しているが、労働生産性低下の主因とは言い難い。

よって、労働生産性上昇率が近年減速している最大の要因は資本装備率の低下である。資本装備率の労働生産性に対する寄与度はマイナス寄与に転じた。金融危機以降のストック調整や、期待収益率の低下による設備投資の低迷が、労働生産性の伸びを下げていたことが確認できる。

加えて、米国においては産業構造の変化が労働生産性の下押し圧力になっている点にも留意が必要だ。付加価値生産の伸びが高い、いわば成長産業である教育・医療やサービス業は相対的に労働生産性が低いため、こうした産業の成長が経済全体の労働生産性の伸びを抑制している。

また、個人消費の成長が続く中、労働集約的な個人向けサービス業における労働者の割合が増加傾向にあることも、資本装備率を下げ、マクロの生産性の下げに寄与している。

こうした産業構造の変化による生産性の低下圧力を緩和するためには、各産業の生産性を引き上げる必要がある。

労働供給の限界が近づく中、特に生産性が低いサービス業の生産性をいかに高めていくかが、長期停滞から脱却するための課題といえる。

 

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