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【米国経済】完全雇用達成で変わる労働市場の問題点とは

ECONOMY
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労働市場は個人消費との相互作用で改善

FRB(米連邦準備制度理事会)は2015年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)において、、政策金利の目標レンジを0.25%pt引き上げ、7年間にわたって継続してきた実質的なゼロ金利政策に終止符を打ち、今もなお大規模緩和を継続する欧州や日本に先んじて金融政策正常化に向けた一歩を踏み出した。

FRBが利上げに踏み切った最大の要因は、米国経済が金融危機による悪化から十分に持ち直したこと、とりわけFRBが重視する労働市場の量的な改善が十分に進んだこと。

金融危機によって一時ピークから900万人近く減少した非農業部門雇用者数は、14年半ばには危機前の水準を回復し、その後も着実に増加して過去最高を更新。労働需給を示す失業率も5%を下回る水準まで低下。

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米国においては個人消費の増加がサービス業を中心に雇用を生み出し、そうした雇用の増加がさらなる個人消費の増加をもたらすという自律的な成長メカニズムが働き、しかもその結びつきは強まる傾向に。

背景にあるのは経済におけるサービス化の進展であり、付加価値生産におけるサービス部門、特に小売りやレジャー・娯楽などの個人向けサービス業は労働集約的で雇用創出効果が大きいため、サービス業に従事する雇用者の割合も上昇し続けている。こうした関係を考慮すれば、先行きもこれまで景気拡大を牽引してきた個人消費の拡大基調が続くとともに、雇用者数の増加も持続する公募が大きい。


労働市場に残された課題とは

一方で、労働市場の質に関しては改善の余地が残されている。

改善が遅れている部分として、労働参加率の低下傾向が挙げられる。高学歴化によって若年層を中心に就学年数が長期化傾向にある一方、相対的に労働参加率が低い高齢世代が労働人口に占める割合が上昇しているという構造要因が労働参加率を下げる一因となっている。

しかし、年代別の労働参加率をみると、働き盛りにあたる30~40代の労働参加率も金融危機以降、低下傾向にあり、構造要因だけでは労働参加率の低下を説明することはできない。就労意欲を失ったままの人数は高止まりしている。

労働市場の逼迫感が高まるにつれ、労働参加率は持ち直していくと期待される。なぜなら企業が人材を確保するために採用条件を緩和する必要性が高まり、賃金の上昇や福利厚生の拡充に加えて、人材に求める能力などのハードルを引き下げざるを得なくなると考えられるからである。

しかし、現状、職探しを諦めている人の多くは、企業が求めるスキルを身につけていない可能性が高く、こうした労働者が労働市場に再参入すると、低賃金労働者が増えて経済全体の平均賃金の伸びを抑制する要因になるとみられる。

また、経済的理由によるパートタイム労働者、いわゆる非自発的パートタイム労働者が労働者全体に占める割合が低下していないことも労働市場の問題点。パートタイム比率の高止まりの背景には、人件費の増加に慎重な企業行動があると考えられ、これに加えてオバマケアの導入という制度要因による影響が指摘できる。

オバマケアによって、フルタイム労働者を50人以上雇う企業は、労働者に対して医療保険を提供することが義務付けられた。このため、企業は保険料によるコスト増加を避けるために、パートタイムによる労働者の割合を増やしていると考えられる。


労働市場の供給制約がボトルネックに

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これまでの景気拡大の原動力になってきた雇用者数の増加ペースは減速していく可能性が高い。

失業率は、5%程度と考えられている長期均衡、すなわち自然失業率に迫る水準まで低下している。自然失業率は必ずしも失業率の下限を示すものではないが、摩擦的失業(職探しや再就職に時間がかかることによる失業)による失業者の存在を前提にすれば、失業率の低下余地はなくなりつつある。

労働供給不足による雇用の伸びの鈍化については、イエレン議長をはじめとするFRB高官もたびたび言及してきた。

実際に労働移動の状況をみても、企業による求人件数が過去最高に近い水準を維持する一方で新規雇用者数の伸びは鈍化しており、労働供給不足が雇用者数の伸びを阻害していることが示唆されている。

また、労働者不足の問題は、単なる人数だけの問題にとどまらない。FRBによるベージュブック(地区連銀景況報告)などでは、以前から労働力不足問題が指摘され、特にIT関連や建設業における高度人材の不足が深刻な問題となっている。

これまで低下傾向が続いてきた労働参加率が上昇に転じれば、労働供給が増加し雇用者数の増加余地は拡大する。しかし、職探しを諦めて労働市場の外側にいる非労働人口は、総じてスキルが低い可能性が高く、そうした人材によって企業が求めるハイスキル人材の不足を補うのは現実的ではないだろう。

 

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